車検証の「原動機の型式」|何を書き写した欄か?
原動機の型式って、カタログの名前?
車に打刻してある記号の写し
消したらどうなるの?
法第三十一条。何人も、と書いてある書類だけじゃ変えられない欄なんだ 車検証の「原動機の型式」に入っている英数字は、実車に打刻(記号を打ち込んで刻むこと)されている記号です。カタログの表記を写した欄ではありません。新規登録の基準を定めた道路運送車両法第八条は、申請書の記号と見比べる対象に実車の打刻を挙げ、実車を提示しない場合については、完成検査終了証などの書面の記載を挙げています。
「中古車の券面と実車が合っているかは、どこを見れば分かるのか」「エンジンを載せ替えたら、この欄はどうなるのか」。この欄を見て迷うのは、たとえばこうした場面です。どちらも、登録の条文と打刻の条文を読むと、確かめる順番が決まります。
原動機の型式って、カタログに載ってるエンジンの名前を写した欄じゃないの?
法第八条が、申請書と同じかどうかを見るものとして挙げてるのは、車に打刻されている記号と、提示の代わりに出す書面。カタログは挙がってない
じゃあ中古車を見に行くときは、車検証の記号と、車に打ってある記号を見比べればいいのか
見比べられる欄は2つある。車台番号と原動機の型式。法が打刻の対象にしてるのは、この2つ
券面のイメージ図では「型式」の右隣にあり、施行規則の第八号で記載される
国土交通省が電子車検証特設サイトに載せている券面のイメージ図では、「原動機の型式」は「型式」の右隣にあります。「燃料の種類」と「総排気量又は定格出力」はその1段上にあり、エンジンに関わる3つの欄が1か所に並んでいるわけではありません。
取り違えやすいのは、隣の「型式」です。車名及び型式は施行規則の第四号、原動機の型式は第八号で、別の号の別の記号です。型式の先頭に付く記号は型式の頭の記号 E-・DBA-・6AA-|何が読み取れる?、型式指定番号と類別区分番号は車検証の型式指定番号と類別区分番号|どこに書いてある?で扱っています。
隣にあるから、型式の続きが書いてあるのかと思ってた。『型式を教えてください』と言われて、こっちを読み上げたら違うんだね
そう、別の欄。聞かれているのが型式なら、イメージ図でいう左の欄を読む。右の欄を読むのは、原動機の型式を聞かれたとき
原動機の型式が券面に載る根拠は、省令である道路運送車両法施行規則にあります。法律のほうで、券面に記載する事項として名前が挙がっているのは、車台番号と使用者の氏名又は名称の2つだけです。
自動車検査証は、車台番号、使用者の氏名又は名称その他国土交通省令で定める事項が記載され、(以下略)
(道路運送車両法 第五十八条第二項)
残りは「その他国土交通省令で定める事項」として施行規則に委ねられていて、第三十五条の三第一項が第一号から第二十九号まで並べています。エンジンに関わる欄は、そのうちの第八号から第十号です。
七 車体の形状
八 原動機の型式
九 燃料の種類
十 原動機の総排気量又は定格出力
(道路運送車両法施行規則 第三十五条の三第一項)
有効期間の満了する日や使用者の住所は、券面には記載されず、ICタグに記録される事項です(施行規則第三十五条の四)。原動機の型式はそちらには入っておらず、券面に記載される事項です。有効期間が券面にない理由は電子車検証|有効期間が券面にないのはなぜ?で扱っています。
新規登録で実車を提示する場合、申請書の記号は打刻と見比べられる
新規登録の申請書に書く事項は6つあります。車名及び型式、車台番号、原動機の型式、所有者の氏名又は名称及び住所、使用の本拠の位置、取得の原因です(法第七条第一項)。国土交通大臣は、申請する人に打刻に関する証明書の提出を求めることもできます(同条第二項)。
申請を受けた国土交通大臣は、4つの場合を除いて新規登録をしなければなりません(法第八条)。その3つ目が、打刻についての定めです。
三 当該自動車に打刻されている車台番号及び原動機の型式(略)が申請書に記載されている車台番号及び原動機の型式と同一でないとき。
(道路運送車両法 第八条第三号)
申請書に書いた車台番号と原動機の型式は、実車に打刻されている記号と見比べられます。 同一でなければ、新規登録はされません。
見落とされやすいのは、上の引用で略したカッコ書きのほうです。ここには、実車を提示しない場合の扱いが書かれています。新規登録の申請では、申請書を出すのに加えて実車を提示します(法第七条第一項)。ただし、同条第三項に挙がっている自動車は、そこで定められた書面を出せば提示に代えられます。型式の指定を受けた自動車なら、完成検査終了証(発行後、省令で定める期間を過ぎていないもの)がその書面です。この場合に申請書と見比べられるのは、書面に記載されている車台番号と原動機の型式です。
登録を受ける自動車は、新規登録が済んでからでないと自動車検査証が交付されません(法第六十条第二項)。券面の原動機の型式は、この見比べを経て登録された記号ということになります。
では、登録が済んだ後にエンジンの型式が変わったら、どうなるのでしょうか。登録されている型式、車台番号、原動機の型式などに変更があったとき、所有者は、その事由があった日から十五日以内に変更登録を申請しなければなりません(法第十二条第一項)。このうち車台番号または原動機の型式の変更には、第八条の第三号と第四号(申請に係る事項に虚偽があると認めるとき)が準用されます(同条第三項)。申請書に新しい記号を書くだけでは足りず、実車の打刻がその記号と同一であることが要ります。
どの作業が原動機の型式の変更にあたるかの例は、第十二条には挙がっていません。
エンジンを載せ替えた中古車を買う話が出たら、僕は何を見ればいい?
券面の原動機の型式と、車の打刻が同じ記号かどうか。違っていたら、変更登録がまだ申請されていない可能性がある
申請するのは所有者だから、買う前なら売り手に済ませてもらう話になるね
打刻できるのは製作者と指定を受けた者で、様式・字体・位置を届け出てから打つ
「打刻が薄くなってきたから、自分で打ち直しておこう」と考えても、次の3種類に入らない所有者にはそれができません。3種類以外の者が打刻することを、法律が禁じているためです。
自動車の製作を業とする者、自動車の車台又は原動機の製作を業とする者及び国土交通大臣が指定した者以外の者は、自動車の車台番号又は原動機の型式を打刻してはならない。
(道路運送車両法 第二十九条第一項)
自動車を作る事業者、車台や原動機を作る事業者、国土交通大臣が指定した者の3種類です。3つ目の指定を受けるには、氏名又は名称及び住所、事業場の名称及び所在地、事業内容、打刻しようとする自動車の車名の4項目を書いた申請書を国土交通大臣に出します(施行規則第三十条)。大臣は、打刻することが適当と認めるときに指定し、適当でないと認めたときは指定を取り消すことができます。
この3種類の者も、打刻の前に届出が要ります。様式などをあらかじめ国土交通大臣に届け出て、届け出たとおりに打たなければなりません(法第二十九条第二項)。届け出る事項は次の3つです。
一 打刻様式
二 打刻字体
三 打刻位置
(道路運送車両法施行規則 第二十六条の七)
届出は第六号様式で、車台または原動機の型式ごとに行います(施行規則第二十七条)。どの様式で、どの字体で、どの位置に打つかが、型式ごとに国へ届けられていることになります。
輸入の場合も、届け出るのは同じ3つの事項です(施行規則第三十条の二)。自動車やその部分の輸入を業とする者は、自動車や車台、原動機を輸入するたびに、輸入の日から二十日以内に届け出ます(法第三十条第一項)。輸入しようとする段階で、製作者の書面を添えて同じ事項を届け出てあれば、輸入のたびの届出はしなくてもよいとされています(同条第二項)。
位置まで届けてあるなら、僕の車のどこに打ってあるかも法令で分かる?
分からない。法と施行規則に書いてあるのは、打刻位置を届け出ることまで。車ごとの位置は書かれてない
なら実車で探すときは、販売店か整備工場で場所を教えてもらうほうが早いね
打刻を消す行為は禁じられ、読めない打刻は国土交通大臣が打ち直せる
打刻を塗りつぶしたり、読み取りにくくしたりする行為は、法第三十一条で禁じられています。違反した者には、1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその両方が科されます(法第百七条第二号)。条文の「塗まつ」は、塗りつぶして消すことです。
何人も、自動車の車台番号又は原動機の型式の打刻を塗まつし、その他車台番号又は原動機の型式の識別を困難にするような行為をしてはならない。但し、整備のため特に必要な場合その他やむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けたとき、又は次条の規定による命令を受けたときは、この限りでない。
(道路運送車両法 第三十一条)
主語は「何人も」で、所有者も、整備をする人も入ります。例外は2つだけです。整備のため特に必要な場合その他やむを得ない場合に国土交通大臣の許可を受けたときと、次条の命令を受けたときです。整備のために打刻を読めなくする作業が避けられない場合でも、先に許可が要ります。
その「次条」が法第三十二条で、国土交通大臣が命令や打刻をできる場合を3つ挙げています。
一 車台番号又は原動機の型式の打刻を有しないとき。
二 当該自動車の車台番号又は原動機の型式の打刻が他の自動車の車台番号又は原動機の型式の打刻と類似のものであるとき。
三 当該自動車の車台番号又は原動機の型式の打刻が識別困難なものであるとき。
(道路運送車両法 第三十二条)
どれかに当たるとき、国土交通大臣は所有者に対して、打刻を受けることや打刻を塗まつすることを命じることができます。大臣が自ら塗まつし、打刻することもできます。第二十九条の3種類の者とは別に、国土交通大臣が自ら打刻する場合が、ここに定められています。
錆びて読めなくなってたら、三号にあたる?
三号の文言は『識別困難なものであるとき』。そうなった理由は、三号には書かれてない
読めないのに気づいても、自分で削ったり打ち直したりはしない。そこは覚えておくよ
軽自動車は登録を受けないが、打刻の4条は軽自動車にも適用される
登録の条文(第七条・第八条・第十二条)と打刻の条文(第二十九条から第三十二条)は、道路運送車両法の第二章「自動車の登録等」に入っています。この章は、冒頭の第四条で、章のなかの「自動車」から軽自動車などを除いています。
自動車(軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。以下第二十九条から第三十二条までを除き本章において同じ。)は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
(道路運送車両法 第四条)
除かれるのは、軽自動車、小型特殊自動車、二輪の小型自動車です。ただしカッコ書きには「以下第二十九条から第三十二条までを除き本章において同じ」と続きがあり、第二十九条から第三十二条までの4条では、この3つも「自動車」に含まれます。打刻できる者の限定、輸入したときの届出、塗まつの禁止、国土交通大臣が自ら行う打刻の4条です。
車検を受ける軽自動車(検査対象軽自動車)の券面にも、原動機の型式の欄はあります。所有者が自分で打刻できないことも、打刻を消す行為が禁じられていることも、軽自動車で変わりません。
当てはまらないのは、登録の条文のほうです。新規登録の基準である第八条も、変更登録の第十二条も、登録を受けない軽自動車には適用されません。軽自動車の券面に「初度登録年月」の欄がない理由は軽自動車の車検証|「初度登録年月」の欄はなぜない?で扱っています。
中古車で券面と打刻を見比べるときの順番
最初に、券面から控える欄を2つに決めます。車台番号と原動機の型式です。「型式」の欄と取り違えないよう、欄の名前ごと控えておきます。
次に、実車のどこに打刻があるかを、販売店か整備工場に聞きます。打刻位置は国への届出事項で、法と施行規則を読んでも車ごとの位置は分からないためです。
最後に、券面の記号と打刻を見比べます。違っている場合や読めない場合は、打刻を削ったり打ち直したりはせずに、売り手に事情を聞きます。登録を受けている車で原動機の型式が変わっているなら、変更登録の申請が済んでいるかどうかを、次に確かめます。
※本記事は2026年10月12日時点の道路運送車両法・同施行規則と、国土交通省の公表資料によります。制度と運用は変わることがあるため、手続きの際は各サイトで最新の案内をご確認ください。