一時抹消と永久抹消|また乗るならどちらを選ぶ?

道路の向かいから見た愛媛運輸支局(松山市)。左奥に白い庁舎があり、青地に白い文字で「愛媛運輸支局」と縦に書かれた看板と街路樹が道路沿いに立っている。敷地のフェンスには横断幕が掛かっている
写真: CT-May / Wikimedia Commons ( CC0 )
── この記事の結論を先に4コマで ──
クラが白いマグカップを片手に持ち、もう片方の手をパーカーのポケットに入れて、口を開けた笑顔でシキに話しかけている。シキは白紙を両手で胸の前に持ち、眉を寄せた真顔でクラを見ている ナンバーを返しても、帰国したらまた同じ車に乗れる?
シキが白紙を1枚、胸の前で持ってクラに見せながら、落ち着いた表情で説明している。クラは白いマグカップを両手で持ち、目を丸くして口をすぼめて聞いている 一時抹消登録なら乗れる。永久抹消は、解体したあとの手続き
画面左のシキが白紙の束を片手に持ち、もう片方の手のひらを軽く上げて、真顔で答えている。画面右のクラは白いマグカップを片手に持ち、眉を下げた心配そうな顔で問いかけている うちの軽も一時抹消でいいの?軽は登録がないから、車検証の返納。窓口は軽自動車検査協会
画面左のシキが白衣の前で両手を軽く組み、口元をゆるめて穏やかに微笑んでいる。画面右のクラは白いマグカップを片手に持ち、もう片方の手をパーカーのポケットに入れて、目を閉じて明るく笑っている 手続きのときにもらう紙は、また乗るときに出す書類になるじゃあ車を預ける前に、その紙のしまい場所を決めておこう

しばらく乗らないけれど、手放すつもりはない。普通車や小型車でそういう車を置いておくなら、選ぶ手続きは一時抹消登録です。永久抹消登録は、車を解体したあとにする手続きで、また乗るための手続きではありません。

軽自動車には、このどちらもありません。軽は登録を受けない車なので、同じ場面の手続きは「自動車検査証返納届」と「解体返納」という名前になり、窓口も運輸支局ではなく軽自動車検査協会です。

「海外赴任の2年間、車は実家の車庫に置いておきたい。帰ってきたら、また同じ車に乗るつもり」「車検が切れたまま、動かしていない車がある」。ナンバーを返すかどうかを考えるのは、たとえばこうした場面です。

また乗れるかどうかは、申請できる場面の違いで決まる

一時抹消登録を定める第16条第1項は、所有者が「その自動車を運行の用に供することをやめたとき」に申請することが「できる」と書いています。条文が書いている条件は乗るのをやめたことで、申請するかどうかは所有者が決めます。期限もありません。

永久抹消登録の第15条第1項は、車が滅失したとき、解体したとき(整備や改造のための解体は除く)、自動車の用途を廃止したときなどに、15日以内に申請「しなければならない」と書いています。こちらは所有者の義務です。

しばらく乗らない解体した
普通車・小型車の手続き一時抹消登録永久抹消登録
根拠(道路運送車両法)第16条第1項第15条第1項
申請するかどうか所有者が選べる所有者の義務
期限なし解体報告記録がなされたことを知った日から15日以内
窓口使用の本拠の位置を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所運輸支局・自動車検査登録事務所
手数料窓口500円/OSS申請450円無料
ナンバープレート外して提出する外して提出する
また乗るとき中古車新規登録と新規検査を受ける解体した車は残っていない
軽自動車の手続き自動車検査証返納届(一時使用中止)解体返納
根拠(道路運送車両法)第69条第4項第69条第1項・第69条の2第1項
窓口使用の本拠の位置を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室同左
手数料450円無料
また乗るとき新規検査(中古車)を受ける解体した車は残っていない

手数料は国交省の「登録・検査手数料一覧表」(令和8年4月1日現在)と、軽自動車検査協会の各手続きのページによります。OSS申請は、自動車保有関係手続のワンストップサービスを使ってインターネットで出す申請です。

一時抹消を選べるのは、永久抹消や輸出の場面に当たらないときだけです。第16条第1項は「前二条に規定する場合を除くほか」と断っていて、解体した車(第15条)と輸出する車(第15条の2)を一時抹消の対象から外しています。

一時抹消した車を後から解体することはできますが、解体した車を一時抹消にすることはできません。

クラ

永久抹消って、名前だけ聞くと『二度と登録できない』っていう意味に見えるね

シキ

永久抹消の条件になっているのは、申請する時点の車の状態。滅失したか、解体したか、用途を廃止したか。どれも、しばらく乗らないという話とは別のもの

クラ

じゃあ迷うのは、手続きの名前より、車を解体するかどうかのほうか

海外赴任で2年家を空ける場合、車は解体せずに置いておくので、選ぶのは一時抹消です。赴任先で「もう乗らないから処分しよう」と決めて解体した場合は、一時抹消のあとに解体を届け出る手続きがあります。こちらは後の節で書きます。

普通車は「登録」を抹消し、軽自動車は「車検証」を返す

軽自動車に一時抹消登録がないのは、抹消する登録がそもそもないからです。道路運送車両法の第二章(自動車の登録等)は、第4条で登録の対象から軽自動車・小型特殊自動車・二輪の小型自動車を外しています。普通車と小型車は自動車登録ファイルに登録を受けて走り、軽自動車は登録を受けずに走ります。

そのかわり、軽自動車も検査は受けています。第58条第1項は、検査対象外軽自動車と小型特殊自動車を除く自動車に、検査を受けて有効な自動車検査証(車検証)の交付を受けることを求めています。だから軽の手続きは、登録を抹消するのではなく、車検証を返す形になります。

車両番号の指定を受けた検査対象軽自動車又は二輪の小型自動車の使用者は、当該自動車を運行の用に供することをやめたときは、当該自動車検査証を国土交通大臣に返納して自動車検査証返納証明書の交付を受けることができる。

(道路運送車両法 第69条第4項)

これが、軽自動車検査協会が「自動車検査証返納届(一時使用中止)」と呼んでいる手続きです。乗るのをやめたときに「できる」と書かれている点は、普通車の一時抹消と同じです。車検証の原本と、外したナンバープレートを持って行きます。

普通車・小型車の一時抹消登録軽自動車の自動車検査証返納届
条文上、手続きをする人所有者(第16条第1項)使用者(第69条第4項)
所有者と使用者が違う車所有者の印鑑(登録)証明書が要る。代理人が出すなら所有者の実印を押した委任状も要る先に所有者から、返納届についての同意を得る
受け取る書類登録識別情報の通知(第18条の2第1項)自動車検査証返納証明書(第69条第4項)

普通車の欄は国交省の必要書類の案内、軽の欄は軽自動車検査協会の案内によります。ローンで買って車検証の所有者と使用者が違っている車は、普通車でも軽でも、使っている本人だけでは手続きが終わりません。

クラ

ローンが残ってる普通車だと、一時抹消は自分では出せないの?

シキ

申請するのは所有者。使用者が窓口へ行くなら、所有者の実印を押した委任状と印鑑証明書を預かって、代理人として出すことになる

クラ

じゃあ赴任が決まったら、引っ越し業者より先にローン会社へ連絡だね

ナンバープレートは、封印とナンバープレートの記事で書いた第20条第1項が扱っています。一時抹消登録や永久抹消登録を受けた所有者は、ナンバープレートと封印を外し、破壊・廃棄するか返納することになっています。国交省の必要書類の案内では、一時抹消・永久抹消のどちらも、提出書類に自動車登録番号標(ナンバープレート)が入っています。

ナンバーを返した車に、また乗るときに要るもの

一時抹消した普通車に戻ってきて乗るときは、登録と検査をもう一度受けます。登録を受けていない車の登録を第7条は「新規登録」と呼んでいて、新車と同じ条文です。国交省の案内は、ナンバーの付いていない中古車の登録を「中古車新規登録」として、新車とは提出書類を分けています。新規検査(第59条)の申請は、新規登録の申請と同時にします(第59条第2項)。

軽自動車は、軽自動車検査協会で「新規検査(中古車)」を受けます。協会はこの検査を、一時使用を中止する手続きをした車を再び使うときに受ける検査、と説明しています。

普通車・小型車軽自動車
手続き中古車新規登録と新規検査新規検査(中古車)
窓口運輸支局・自動車検査登録事務所軽自動車検査協会の事務所・支所・分室
一時抹消・返納のときに受け取った書類登録識別情報等通知書自動車検査証返納証明書
保安基準に適合していることの確認合格印のある自動車検査票、有効な自動車予備検査証、乗用車なら有効な保安基準適合証のどれか協会の検査場での検査(予約制)か、指定自動車整備事業者が交付した保安基準適合証
自賠責保険(共済)証明書を提示する新しい車検証の有効期間のすべてと重なるものが要る
自動車重量税自動車重量税納付書で納める自動車重量税納付書で納める
車庫自動車保管場所証明書の適用地域なら、申請のときに証明書が要る協会の手続きには要らない。地域によっては、車検証の交付を受けたあとで警察署への届出が要る
手数料登録は窓口1,300円/OSS申請750円。ほかに検査手数料とナンバープレートの交付手数料返納証明書と保安基準適合証を出す検査は2,000円。ほかに関係団体での手続きの費用が別にかかる

普通車の欄は国交省の「新規登録」と「登録・検査手数料一覧表」、軽の欄は軽自動車検査協会の「新規検査(中古車)」によります。

普通車で一時抹消した車の新規登録を受けるときは、一時抹消のときに通知された登録識別情報を提供します(第18条の3第1項)。国交省の提出書類の案内では、「登録識別情報等通知書」がこれに当たります。軽では、協会が新規検査(中古車)の必要書類に自動車検査証返納証明書を挙げています。

保安基準適合証は、指定自動車整備事業者が車を点検・整備し、保安基準に適合することを自動車検査員が証明したときに交付する書面です(第94条の5第1項)。車検のときには保安基準適合標章と一緒に交付されますが、一時抹消した車と返納証明書の交付を受けた軽自動車には、同じ項の括弧書きにより適合証だけが交付されます。軽自動車検査協会は、適合証の有効期間を検査の日から15日間と案内しています。

一時抹消した乗用車でこの適合証を受け取っていれば、新規登録のときに車を運輸支局へ持ち込まず、書面の提出で済ませられます。第7条第3項第三号が、一時抹消登録のあとに有効な保安基準適合証の交付を受けている乗用自動車等について、書面の提出で車の提示に代えられるとしています。

クラ

帰ってきた日に、そのまま車庫から乗って出かけられるわけじゃないんだ

シキ

ナンバーを返した車は、登録と検査を受け直すまで道路を走れない。検査場まで自走させるなら、臨時運行の許可を受ける

クラ

じゃあ帰国の日が決まったら、先に整備工場と相談だね

臨時運行の許可は、第34条と第35条が定めています。新規登録や新規検査の申請のために車を運ぶ回送は、許可を出せる場面として第35条第1項に書かれています。許可を出すのは地方運輸局長、市と特別区の長、政令で定める町村の長で(第34条第2項)、有効期間は原則として5日を超えられません(第35条第3項)。

一時抹消のあとで解体したら、15日以内に届け出る

一時抹消した車を解体したら、所有者はそれを国土交通大臣に届け出ます(第16条第2項)。永久抹消登録を申請し直すのではなく、国交省の案内でいう「一時抹消登録後の解体届出」です。軽自動車も、返納届のあとで解体したときは、解体返納をし直すのではなく、所有者が「解体届出」をします(第69条の2第1項)。

普通車・小型車軽自動車
手続き一時抹消登録後の解体届出解体届出
根拠(道路運送車両法)第16条第2項第69条の2第1項
届け出る人所有者所有者
期限解体報告記録がなされたことを知った日から15日以内同左
窓口運輸支局・自動車検査登録事務所最寄りの軽自動車検査協会の事務所・支所・分室
手数料無料無料
書くもの・出すもの解体に係る移動報告番号と解体報告記録がなされた日。登録識別情報等通知書移動報告番号

移動報告番号は、自動車リサイクル法にもとづいて車を引き取った業者(引取業者)から伝えられる番号です。軽自動車検査協会は、引き渡したときに引取業者から交付される「使用済自動車引取証明書」に記載されている、と説明しています。

15日の数え始めは、解体を頼んだ日でも、業者が解体した日でもありません。

クラ

実家の親に解体を頼んでおいて、気づいたら15日過ぎてた、ってことはない?

シキ

数え始めは、解体報告記録がなされたことを所有者が知った日。知らせは引取業者から届く決まりで、一時抹消した車と軽自動車にも同じ決まりが当てはまる

クラ

知らせが来た日から15日か。赴任先にいても受け取れるようにしておかないと

怠った手続き罰則
永久抹消登録の申請(第15条第1項)50万円以下の罰金(第109条第2号)
一時抹消後の解体の届出(第16条第2項)30万円以下の罰金(第110条第3号)
軽自動車の解体の届出(第69条の2第1項)30万円以下の罰金(第110条第3号)
解体したときの車検証の返納(第69条第1項)30万円以下の過料(第112条)

一時抹消をしないまま解体した普通車は、永久抹消登録の申請になります。所有者が申請しないときは、国土交通大臣が7日以上の期間を定めて申請するよう催告し(第15条第4項)、それでも正当な理由なく申請しないときは、大臣が永久抹消登録をして所有者に通知します(第15条第5項)。

解体したときに車検証を返すのは使用者の義務で、期限は同じく15日以内です(第69条第1項第1号)。普通車の永久抹消登録では、国交省の案内が提出書類に車検証を挙げています。軽自動車検査協会の「解体返納」では、車検証の原本とナンバープレートを返し、あわせて移動報告番号を書いた解体届出書を出します。

税金は、普通車と軽で年度の途中の扱いが違う

普通車と小型車にかかる自動車税は、4月1日が賦課期日です(地方税法 第155条)。年度の途中で納税義務が消滅した人には、その消滅した月まで月割で課す、と第157条第2項が定めています。

東京都主税局は、年度の途中に抹消登録した場合、抹消登録した月の翌月分から月割で減額すると案内しています。基準になるのは、業者に車を引き渡した日ではなく、運輸支局や自動車検査登録事務所で実際に抹消登録した日です。廃車したのに新しい年度の納税通知書が届く理由の1つとして、3月31日までに抹消登録が終わらなかった場合を挙げています。

クラ

軽も同じように、返した月の翌月から減るの?

シキ

軽自動車税は、自動車税と違って月割で減る定めがない。4月1日に車検証の名義が残っていれば、その年度の分がかかる

クラ

3月に返すつもりなら、月末まで待たずに行ったほうがいいのか

地方税法第449条は、軽自動車税の賦課期日を4月1日としています。軽自動車検査協会も、自動車検査証返納届のページで、4月1日現在の車検証の名義の人に軽自動車税が課税されると書き、毎年3月は窓口がとても混雑するので手続きは早めに、と呼びかけています。

解体した車は、自動車重量税の還付の対象にもなります。軽自動車検査協会は、自動車リサイクル法にもとづいて適正に解体され、解体届出と同時に還付申請をした場合に、車検の残りの期間に対応する重量税額が還付されると案内しています。残りの期間が1か月以上ある場合に限ります。普通車でも、国交省の案内は永久抹消登録と一時抹消後の解体届出の提出書類に自動車重量税還付申請書を挙げていて、青森運輸支局の永久抹消登録の案内は、永久抹消登録を終えたあとで還付申請だけを後日することはできない、としています。

自賠責保険や任意保険の扱いは、この記事では扱いません。

最初に決めるのは、その車を解体するかどうか

手続きを選ぶ前に決めるのは、その車を解体するかどうかです。解体したあとで選べるのは、普通車なら永久抹消登録(一時抹消していた車なら解体届出)、軽なら解体返納(返納届を出していた車なら解体届出)で、どれも車が残っていないことを前提にした手続きです。一時抹消や返納届にしておけば、あとで解体を届け出ることも、登録と検査を受け直して乗ることもできます。

次に確かめるのは、車検証の所有者が誰かです。ローン会社や販売店が所有者になっている普通車なら、一時抹消には所有者の印鑑証明書と、代理で出すなら所有者の委任状が要ります。軽でも、返納届の前に所有者の同意を得ます。入院や赴任の日程が決まった時点で、所有者に連絡を入れておくと、書類をそろえる時間が取れます。

年度末が近いなら、手続きの日を3月31日までに入れるかどうかも決めておきます。軽は、4月1日に車検証の名義が残っていると、その年度の軽自動車税がかかります。

最後に、手続きで受け取る書類のしまい場所を決めます。普通車の登録識別情報等通知書は、また乗るときの中古車新規登録にも、あとで解体したときの解体届出にも、一時抹消中に車を譲るときの所有者変更記録にも要ります。一時抹消した車を譲る人は、登録識別情報を譲り受ける人に提供しなければなりません(第18条の3第2項)。青森運輸支局の案内では、解体の届出には一時抹消登録証明書も使えます。軽の自動車検査証返納証明書は、新規検査(中古車)の必要書類です。

車検証とナンバープレートは手続きで返しているので、2年後に戻ってきて登録や検査を受け直すときに出すのは、車検証ではなくこの紙です。

制度と手数料の記述は、執筆時点(2026年9月28日)の情報です。