車検証の所有者と使用者|引越しの手続きは誰がする?
ローンで買った車、車検証のどこにも所有者が書いてないんだけど?
券面に載る名前は使用者だけ。所有者の氏名と住所はICタグの中にある
引っ越したら、手続きは所有者の販売店がやってくれるの?普通車なら、変更登録は所有者、変更記録は使用者。2つは同時に出す
じゃあ自動車税も、所有者欄の販売店にかかるの?所有権を留保した売買なら、かかるのは買主のほう 車検証の「所有者」と「使用者」は、名前の違いではなく、法律上の役割の違いです。普通車や小型車なら、道路運送車両法では、登録の変更を申請するのは所有者、車検証の記録を直してもらうのは使用者と、手続きの義務がはっきり分かれています。そして自動車税は、ローンで所有者欄が販売店側になっていても、買った本人にかかります。
「ローンで買ったのに、車検証に自分の名前が見当たらない」「引越ししたけれど、手続きをするのは自分なのか、所有者欄の会社なのか分からない」。車検証を手にして迷うのは、たとえばこうした場面です。
電子車検証の券面には、所有者の欄がない
最初に確かめておきたいのは、手元の車検証に「所有者」がそもそも印字されているかどうかです。
電子車検証は、従来のA4の紙から、A6サイズ相当の厚紙にICタグを貼った形に変わった車検証です。券面に載るのは「変更登録等による記載事項の変更を伴わない基礎的情報」だけで、それ以外の車検証情報はICタグに格納されています。
券面とICタグに分かれている項目のうち、この記事に関係するものを並べると次のとおりです。
| 項目 | 券面に記載 | ICタグのみ |
|---|---|---|
| 使用者の氏名又は名称 | ○ | |
| 使用者の住所 | ○ | |
| 所有者の氏名・住所 | ○ | |
| 使用の本拠の位置 | ○ | |
| 自動車検査証の有効期間 | ○ |
券面に名前が出るのは使用者だけで、所有者は氏名も住所も券面にありません。使用の本拠の位置(車を使う人の拠点。個人ならふだん住んでいる所)や、車検の有効期間も券面からは読めません。
では、所有者が誰になっているかは、どこで確かめればよいのでしょうか。
方法は二つあります。一つは「車検証閲覧アプリ」でICタグを読み取ることです。汎用のICカードリーダか、読み取り機能のあるスマートフォン・タブレットが必要です。券面にある二次元コードはアプリの読み込みには使えず、ICタグそのものを読む必要があります。
もう一つは「自動車検査証記録事項」を見ることです。ICタグの内容も含めたすべての車検証情報が載った書面で、2027年12月末までは、電子車検証の発行時・更新時に運輸支局等の窓口で渡されています。この記録事項は、車検証と違って車に備え付ける義務はありません。それでも国交省は、スマートフォンの操作に不慣れな人などに向けて、電子車検証と一緒に車に載せておくことをすすめています。
車検のあとに、その紙をもらった覚えがないんだよね。どこかで失くしたのかな
失くしたとは限らない。発行や更新のときに渡すのは2027年12月末までだけど、車検のように券面の記載事項が変わらない検査の手続きでは、窓口での受け渡しが2025年12月末で先に終わっている
たとえば、ローンの完済が近づいて車検証を出してみたものの、券面のどこにも所有者が書かれていない。そのときは、車内に自動車検査証記録事項が載せてあれば、それを開くのが早道です。紙が手元になければ、アプリでICタグを読むことになります。
道路運送車両法では、所有者と使用者の義務が別の条文に書かれている
所有者と使用者の違いは、条文を並べてみるとはっきり分かります。どちらも「15日以内」という期限は同じですが、義務を負う人と、対象になる手続きが異なります。
| 条文 | 義務を負う人 | 手続き | きっかけ | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 第12条 | 所有者 | 変更登録の申請 | 型式、車台番号、原動機の型式、所有者の氏名・名称・住所、使用の本拠の位置の変更 | 15日以内 |
| 第13条 | 新所有者 | 移転登録の申請 | 所有者の変更 | 15日以内 |
| 第67条 | 使用者 | 自動車検査証の変更記録 | 自動車検査証記録事項の変更 | 15日以内 |
第12条の変更登録は、自動車登録ファイルに載っている内容を直す手続きで、申請するのは所有者です。第13条の移転登録は、所有者そのものが入れ替わったときの手続きで、こちらは新しく所有者になった人が申請します。一方、第67条の変更記録は車検証の記録を直す手続きで、義務を負うのは使用者です。
ただし、第12条と第13条は登録の手続きで、普通車や小型車のように登録を受ける車の規定です。第4条は、この登録の対象から軽自動車を外しています。軽自動車検査協会は、軽自動車の使用者の住所が変わったときの手続きを「住所変更」として案内していて、車検証に記録された使用者と所有者が違う場合は、あらかじめ所有者(自動車販売店やローン会社など)から、記録事項の変更について同意を得てから手続きするよう求めています。
登録を受ける車で見落とされやすいのは、第12条第2項の定めのほうです。変更登録を申請すべき事由があり、同時に第67条の変更記録も申請すべきときは、両方を同時にしなければならないとされています。一つの出来事で、所有者と使用者の両方に義務が生じる場面があります。
なお、市町村合併のように行政区画や土地の名称が変わっただけで住所や使用の本拠の位置の表記が変わった場合は、第67条の変更記録の対象外です。
登録には、手続き上の意味だけでなく権利の面の意味もあります。第5条は、登録を受けた自動車の所有権を得たり失ったりしたことは、登録を受けなければ第三者に対抗できない、としています。所有者欄に誰の名前があるかは、「誰の車か」を第三者に示す根拠になっているわけです。
引越しで使用の本拠が変わると、所有者と使用者の両方が関わる
普通車や小型車で、自分が所有者であり使用者でもある車で引越しをした場合、使用の本拠の位置や所有者の住所が変わるので、第12条の変更登録の対象になります。同時に、車検証に記録されている使用者の住所なども変わるため、第67条の変更記録も必要になります。第12条第2項により、この二つは同時に申請します。所有者と使用者が同じ人なら、一人で両方の義務を負う形です。
悩ましいのは、所有者欄が自分以外になっている車で引越しをした場合です。「使っているのは自分なのに、手続きの義務は所有者側にあるのか」と迷うところです。
登録を受ける車なら、使用の本拠の位置が変わったことによる変更登録の申請義務は、所有者にあります(第12条)。車検証の変更記録を受ける義務は、使用者にあります(第67条)。そして両方が要る場面では、同時に申請することになっています。
でも、引っ越したのは自分で、販売店の住所は変わってないよ。それでも所有者の側に義務がくるの?
第12条が挙げる項目には、所有者の住所と並んで使用の本拠の位置が入っている。使用者の引越しでそこが変われば、所有者の住所がそのままでも第12条に当たる
15日って、荷ほどきをしているうちに過ぎそう。しかも相手と日を合わせるんでしょ
期限は所有者も使用者も同じ15日で、数え始めるのは事由があった日から。思い出した日からではない
うちのは軽なんだけど、それも同じ?
軽は登録の対象外だから、第12条はかからない。住所変更は使用者の手続きで、所有者が別にいれば、先にその同意を取ってから出す
所有者が販売店やローン会社であるとき、実際にどう連絡を取り、どの書類を揃えるかは契約や相手先ごとに異なり、この記事では扱いません。移転登録・変更登録や軽自動車の住所変更の必要書類・手数料も扱いません。ここで押さえておきたいのは、所有者が別にいる車の引越しは、登録を受ける車でも軽自動車でも、自分だけでは完結しない出来事だという点です。
ローンで所有者欄が売主でも、自動車税は買主にかかる
ローンで買った車では、売主(販売店など)が所有権を留保し、車検証の所有者欄が売主側になっていることがあります。
ここで気になるのが税金ではないでしょうか。地方税法第146条第1項は、自動車税を「その所有者に課する」と定めています。所有者欄が売主なら、税金も売主にかかるように読めます。
ところが、続く第147条第1項に例外があります。売買契約で売主が所有権を留保している場合は、買主を所有者とみなして自動車税を課す、という規定です。所有権留保という形は、この条文があらかじめ想定している売買の形でもあります。売買契約の買主が変わったときは、新たに買主となる人を所有者とみなします(第147条第2項)。軽自動車税も同じ構造で、第443条第1項・第444条第1項により、所有者に課したうえで、所有権留保の場合は買主を所有者とみなします。
| 場面 | 車検証の所有者欄 | 自動車税・軽自動車税がかかる人 |
|---|---|---|
| 所有権留保がなく、所有者も自分 | 自分 | 自分 |
| 売主が所有権を留保 | 売主側 | 買主(所有者とみなす) |
所有者欄に自分の名前がないのに、自動車税の納税通知が自分宛てに届く。条文どおりの扱いです。車検証の所有者欄に載っている人と、税金を負う人は、別になることがあります。
所有者として名前が載っていないのに、税金だけは所有者と同じように自分に来るんだ。ちょっと割り切れない
第147条がそう決めている。登録の上の所有者は道路運送車両法、税の上の所有者は地方税法で、決める法律が別なんだ
所有者と使用者が異なる場合の任意保険や自賠責の扱い、完済後に所有者を自分に移す所有権解除の手続きの具体は、この記事の範囲外です。
手続きをしないと、罰金のほかに通知が届かなくなる
国交省は、引越しで住所が変わったら変更登録を、所有者の名義が変わったら移転登録を行うよう呼びかけています。
怠った場合の罰則は、道路運送車両法に定めがあります。
| 違反 | 罰則 |
|---|---|
| 第12条第1項(変更登録)・第13条第1項(移転登録)の申請をしなかった | 50万円以下の罰金(第109条第2号) |
| 第67条第1項(変更記録)に違反した | 30万円以下の罰金(第110条第1号) |
国交省が挙げている支障は罰金だけではありません。リコールの案内や、税金・保険のお知らせが届かないおそれがある、としています。引越し後、変更の手続きをしないまま過ごしているうちに、自分の車に出ていたリコールの案内を受け取れていなかったと気づく。手続きの遅れが実害になるのは、むしろこうした場面です。
車検証は「名前が載っているか」ではなく「誰に何の義務があるか」で読む
引越しやローンの完済で車検証を出したとき、最初に確かめるのは、自分が所有者なのか、使用者なのか、その両方なのかです。券面で分かるのは使用者までなので、所有者を知るには自動車検査証記録事項の紙を開くか、車検証閲覧アプリでICタグを読みます。
普通車や小型車で所有者も自分なら、変更登録と変更記録を一人で同時に出します。所有者が販売店やローン会社なら、変更登録は相手の義務、変更記録は自分の義務で、しかも同時に出す決まりです。軽自動車なら手続きは使用者の住所変更で、所有者が別にいれば先にその同意を得ます。15日の期限は事由があった日から数えるので、相手と日を合わせたり同意を得たりする時間もその中に入ります。
ローンで売主が所有権を留保しているなら、所有者欄が相手のままでも、自動車税や軽自動車税は自分にかかります。住所の手続きが遅れれば、その税金のお知らせを受け取れなくなるおそれがあります。