車庫証明のステッカー廃止|車庫証明そのものも要らなくなった?

「車庫証明のステッカー(保管場所標章)は2025年4月1日に廃止」と題した模式図。「2025年3月31日まで」の列に自動車の保管場所の確保等に関する法律の条文を4つ並べ、矢印の先の「2025年4月1日から」の列で、第六条(保管場所標章の交付・表示・再交付)は「削除」、第四条(保管場所の確保を証する書面)と第五条(軽自動車の保管場所の届出)は「残る」、第七条(保管場所の位置を変えたときの届出)は「残る」に「標章を準用した第二項は削除」と添えている。左側には、改正前の施行規則 別記様式第5号の標章が直径70mmの円だったことを、図案のない破線の円と寸法線で示している
写真: 型式ラボ編集部 (自作図版・自動車の保管場所の確保等に関する法律(2022年6月17日施行の版・2025年4月1日施行の版)と、同法施行規則 別記様式第五号の寸法をもとに編集部で作成。標章の図案を再現した図ではありません)
── この記事の結論を先に4コマで ──
左のシキが白紙の書類を両手で胸の前に持ち、眉を寄せてクラのほうを見ている。右のクラは白いマグカップを片手に持ち、もう片方の手をパーカーのポケットに入れて、口を開けてシキに問いかけている 車庫証明を取っても、丸いステッカーはもう渡されないの?
シキが白紙の書類の束を片手に抱え、もう片方の手のひらを上に向けてクラへ差し出しながら話している。クラは白いマグカップを両手で持ち、目を丸くして聞いている 標章を定めた第六条が削除され、2025年4月1日から交付されない
クラが白いマグカップを両手で持ったまま身を乗り出し、目を見開いて大きく口を開けて驚いている。シキは白紙の書類の束を片手で抱え、目を閉じて落ち着いた表情をしている じゃあ車庫証明そのものも要らなくなったの?無くなったのは標章だけ。証明書と届出は残っている
クラが片手を顎に当てて考え込み、もう片方の手で白いマグカップを持っている。シキは白紙の書類を両手で胸の前に持ち、真顔でクラを見て答えている 貼ってあるステッカーは、剥がしたほうがいいの?改正後の法令には、どちらとも定めが無い

車庫証明を取ったときや、軽自動車の保管場所を届け出たときに警察署長から交付されていた丸いステッカーは、法律上の名前を「保管場所標章」といいます。交付と表示を定めていた自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下、法)の第六条は、令和六年法律第三十五号による改正で「削除」となり、2025年4月1日に施行されました。この日からは、証明書を取っても届出をしても、標章は交付されません。

無くなったのは標章だけです。保管場所を確保する義務(第三条)、登録のときに出す証明書(第四条)、軽自動車の届出(第五条)、保管場所の位置を変えたときの届出(第七条)は残っています。

改正前の第六条は、交付を受けた保有者に標章の表示を義務づけていました。一方で、罰則の第十七条は第六条を挙げておらず、警察庁が法案に付けた参考資料も「保管場所標章の表示義務に罰則規定はなし」と書いています。すでに貼ってある標章をどうするかは、改正後の法にも、施行令にも施行規則にも定めがありません。

改正前の第六条は、交付を警察署長に、表示を保有者に義務づけていた

警察署長は、第四条第一項の政令で定める書面を交付したとき、同項ただし書の政令で定める通知を行つたとき、又は前条の規定による届出を受理したときは、当該自動車の保有者に対し、当該自動車の保管場所の位置等について表示する国家公安委員会規則で定める様式の保管場所標章を交付しなければならない。

2 前項の規定により保管場所標章の交付を受けた者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該自動車に保管場所標章を表示しなければならない。この場合において、道路運送車両法第十二条に規定する処分又は同法第十三条に規定する処分についての第四条第一項の政令で定める書面の交付又は同項ただし書の政令で定める通知に係る保管場所標章を表示するときは、既に表示されている保管場所標章を取り除かなければならない。

3 自動車の保有者は、前項前段の保管場所標章が滅失し、損傷し、又はその識別が困難となつた場合その他国家公安委員会規則で定める場合には、当該自動車の保管場所の位置を管轄する警察署長に、その再交付を求めることができる。

(法 第六条。2022年6月17日施行の版で、2025年3月31日まで効力があったもの)

第一項が交付の場面として挙げているのは、警察署長が第四条の証明書を交付したとき、証明書の代わりに行政庁へ通知したとき、第五条の軽自動車の届出を受理したときの3つです。ほかの条が第六条を準用している場面もあり、保管場所の位置を変えたときの第七条の届出を受理したときも、同条第二項によって標章が交付されました。

貼り方は、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則(以下、規則)の第七条が決めていました。

法第六条第二項(…)の規定による保管場所標章の表示は、当該保管場所標章を当該自動車の後面ガラスに、当該保管場所標章に表示された事項が後方から見やすいようにはり付けることにより行わなければならない。ただし、当該自動車に後面ガラスがない場合、当該自動車の後面ガラスにはり付けた場合において保管場所標章に表示された事項を後方から見ることが困難であるときその他保管場所標章を当該自動車の後面ガラスにはり付けることが適当と認められない場合にあっては、当該自動車の車体の左側面に保管場所標章に表示された事項が見やすいようにはり付けることにより行わなければならない。

(規則 第七条。2025年3月1日施行の版)

貼る場所はリアの窓ガラスで、後ろから表示が読める向きに貼るのが原則でした。後面ガラスが無い車や、貼っても後ろから読みにくい車は、車体の左側面に貼ることになっていました。

標章の様式は規則の別記様式第5号で、直径70mmの円として描かれています。備考は、標章に保管場所標章番号、保管場所の位置、交付した警察署長を印字し、保管場所の位置は都道府県と市区町村の名前で表すと定めていました。

法の附則第二項は、第四条から第七条までを、政令で定める地域の外に使用の本拠の位置がある保有者には適用しないとしていました。第六条もこの範囲に入っていたので、証明書も届出も要らない地域では、標章も交付されませんでした。政令で定める地域は、登録車と軽自動車で別々に、2000年6月1日の特別区と市町村の区域で決まっています。

貼る義務に、罰則は付いていなかった

改正前の法で罰則を定めていたのは、第十七条、第十八条、附則第九項の3か所です。第十七条が罰する違反として挙げている規定は、次のとおりです(2022年6月17日施行の版)。

  • 第四条:虚偽の書面を出す、または警察署長に虚偽の通知をさせて、登録を受ける
  • 第五条・第七条第一項・第十三条第三項:届出をしない、または虚偽の届出をする
  • 第九条第一項:公安委員会の命令に違反して、保管場所の確保が確認される前に車を運行に使う
  • 第九条第六項:その命令のときに車に貼られた標章を壊す、汚す、取り除く
  • 第十一条第一項・第二項:道路を保管場所として使う、道路の同じ場所に12時間(夜間は8時間)以上続けて駐車する
  • 第十二条:公安委員会に報告や資料を出さない、または虚偽の報告や資料を出す

第六条は、どの項にも入っていません。第十八条は、第十七条の違反行為が法人や人の業務に関して行われたときに、行為者に加えてその法人や人も罰する規定です。附則第九項は、軽自動車の附則第七項の届出などをしない、または虚偽の届出をしたときの罰金です。どちらも第六条には触れていません。

第九条第六項の標章は、公安委員会が運行を禁じる命令を出した車の前面に貼るもので、保管場所標章とは別のものです。こちらは現行の法にも残っています。

警察庁が国会提出法案のページに載せている参考資料(概要)は、保管場所制度の概要に「保管場所標章の表示義務(※2)」と書き、その注に「※2 保管場所標章の表示義務に罰則規定はなし」と添えています。

改正前の第八条は、警察署長が公安委員会へ通知する条件の中に、標章の表示にふれる一句を置いていました。

警察署長は、自動車について、保管場所標章が表示されていないことその他の理由により、道路上の場所以外の場所に保管場所が確保されていないおそれがあるものと認めたときは、当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に対し、その旨を通知するものとする。

(法 第八条。2022年6月17日施行の版)

クラ

罰則が無いなら、貼るかどうかは持ち主の自由だったってこと?

シキ

自由ではなかった。第六条第二項は『表示しなければならない』。義務はあって、その義務に罰則が付いていなかった

クラ

罰則は無くても、貼っていないと、保管場所が無いかもしれないと警察署長が考える理由のひとつにはなってたんだ

シキ

第八条はそう書いていた。ただ『その他の理由』と並べた例のひとつで、表示が無ければ必ず通知する、という書き方ではない

2025年4月1日の改正で削られた規定と、残った規定

改正したのは、令和六年法律第三十五号「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律」で、公布は2024年5月24日、施行は2025年4月1日です。

規定2025年3月31日までの中身2025年4月1日から
法 第三条保管場所を確保する義務(2kmなどの要件は施行令 第一条)残る
法 第四条登録のときに出す証明書、または警察署長からの通知残る
法 第五条軽自動車の届出残る
法 第六条保管場所標章の交付・表示・再交付「削除」
法 第七条第一項:保管場所の位置を変えたときの届出/第二項:その届出への第六条の準用第二項を削って残る
法 第八条保管場所が確保されていないおそれを、警察署長が公安委員会へ通知する「、保管場所標章が表示されていないことその他の理由により」を削って残る
法 第十一条道路を保管場所として使うことなどの禁止残る
法 第十三条 第四項運送事業用でなくなった車の届出への、第六条と第七条の準用第六条の準用を削って残る
法 附則 第二項第四条から第七条までを、政令で定める地域の外では適用しない第六条を外して残る
法 附則 第五項使用の本拠の位置を地域の外へ移したら、標章を取り除く削る
法 附則 第八項軽自動車の附則第七項の届出への、第六条と第七条の準用第六条の準用を削り、附則第七項になる
規則 第一条 第四項前の車と同じ使用の本拠の位置・保管場所で所在図を省くとき、申請書に前の車の保管場所標章番号を書く無くなる(所在図を省ける場合を定めた第三項第一号は残る)
規則 第四条・第五条保管場所標章の交付の手続無くなる
規則 第六条保管場所標章の様式(別記様式第5号)無くなる
規則 第七条保管場所標章の貼り方(後面ガラス、それが難しい車は車体の左側面)無くなる
規則 第八条保管場所標章の再交付無くなる

規則は第四条から第八条までが無くなり、運行を禁じる命令と聴聞の手続を定めていた第九条から第十二条が、第四条から第七条へ繰り上がっています。

クラ

2025年4月1日以降に引っ越して車庫証明を取り直した人は、ステッカーを渡されていないんだよね。手続きに抜けがあったわけじゃないんだ

シキ

交付の根拠だった第六条が無いから、渡されない。登録のほうも、第四条第二項で行政庁が登録をしないとしているのは、証明書の提出も通知も無いとき。標章は、改正前からこの条件に入っていなかった

改正の理由は、法案の「理由」に次のように書かれています。

国民の利便性の向上及び行政運営の効率化を図るため、自動車の保管場所の位置等を表示する保管場所標章に関する規定を削除する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(警察庁「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」案文・理由)

参考資料(概要)は、「駐車環境の深刻な悪化等を背景に、平成2年に保管場所標章制度を創設」と経緯を書き、目的を2つ挙げています。

・保管場所標章を交付した警察署に対する照会により、保管場所の位置の簡便・迅速な調査が可能

・自動車の保管場所を外形的に第三者に明らかにすることで、自動車の保有者に保管場所の確保を動機付け、その継続的な履行を確保

(警察庁「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(概要)」)

そのうえで「保管場所情報に係るデータベースの整備等により、上記の目的は、保管場所標章によらずに達成されている。」とし、改正の内容を「保管場所標章を廃止(保管場所制度自体は存続)」とまとめています。期待される効果は2つです。1つは自動車の保有者の負担軽減で、「電子申請の場合は、保管場所関係手続の全てをオンラインで完結させることが可能」「標章交付手数料の廃止により経済的負担が軽減」の2点が添えてあります。もう1つは「都道府県警察における保管場所関係業務に係る窓口業務の負担軽減」です。

貼ってあるステッカーの扱いは、改正後の法令に定めがない

クラ

洗車のたびに、リアガラスの丸いステッカーが目に入るんだよね。剥がしたほうがいいの? 残しておかないといけないの?

シキ

どちらとも書いていない。改正後の法にも、施行令にも、規則にも、交付済みの標章についての定めが無い

規則の改正(令和六年国家公安委員会規則第十七号)の附則には経過措置が置かれていますが、対象は改正前の様式による書類と用紙です。改正法と施行令の改正の附則は、施行日を定めているだけです。

改正前の条文には、標章を取り除かなければならない場面が2つありました。

1つは、上に引いた第六条第二項の後段です。使用の本拠の位置が変わる変更登録か移転登録で新しい標章を表示するときは、すでに表示されている標章を取り除きます。保管場所の位置を変えた届出で交付された標章にも、第七条第二項がこの後段を読み替えて準用していました。中古で買った車を、使用の本拠の位置が変わる移転登録で自分の名義にし、新しい標章を貼る場合も、この場面に当たりました。

もう1つは、法の附則第五項です。

保管場所標章が表示されている自動車の保有者は、当該自動車の使用の本拠の位置を附則第二項の政令で定める地域からそれ以外の地域に変更した場合には、速やかに、当該表示されている保管場所標章を取り除かなければならない。

(法 附則 第五項。2022年6月17日施行の版)

証明書や届出が要る地域から、要らない地域へ使用の本拠の位置を移したときの定めです。

フロントガラスの車検シールは、道路運送車両法の標章

令和六年法律第三十五号の案文が改めているのは、保管場所法だけです。フロントガラスの内側に貼る車検シール(検査標章)は、道路運送車両法 第六十六条が定める標章で、この改正の対象に入っていません。指定自動車整備事業者が交付する保安基準適合標章も、道路運送車両法 第九十四条の五が定める標章です。

制度の記述は執筆時点(2026年9月14日)の情報です。