8ナンバー(キャンピング車)の構造要件|天井の高さは何mm要る?

ハイエースをベースにしたキャブコンタイプのキャンピングカー(トヨタ ファーストカスタム CG-500 Fairy)の前方左からの外観
写真: Mr.choppers / Wikimedia Commons ( CC BY-SA 4.0 ・トリミングして縮小)

8ナンバーの「キャンピング車」は、感覚で判断される区分ではありません。就寝設備の寸法も、タンクの容量も、天井の高さも、設備を使う場所の床面積も、すべて数値で決まっています。

そのうち内装のレイアウト全体を左右するのは、調理台と洗面台を床面から何mmの位置に置くかです。ここが850mmを超えるかどうかで、必要な天井の有効高さが400mm変わります。

バンを買って中を作り込むにせよ、いま乗っている車をキャンピング仕様にするにせよ、間取りのスケッチより先に決めておきたいのが、この高さです。「棚とシンクの割り付けまで描いてから、天井が足りないと気づく」。手戻りが大きいのは、たとえばこうした場面です。

調理台と洗面台の高さで、必要な天井高が400mm変わる

天井高の要件。設備の高さが850mm超なら1,600mm以上、850mm以下なら1,200mm以上でよい
設備の高さ必要な有効高さ
床面から850mmを超える1,600mm以上
床面から850mm以下1,200mm以上

この400mmが問題になるのは、全高に余裕のない軽キャンピングカーやバンコンです。1,600mmの有効高さは、車体の寸法からして取りようがありません。調理台を低く作れば1,200mmで足りるので、8ナンバーを取れるかどうかが、この一点で決まります。

しかも、あとから直しにくい部分です。天井高が足りないと分かってから設備の高さを下げると、シンクの配管も、収納の割り付けも、立って使う動線も、まとめてやり直しになります。

判定の基準そのものは、はっきりしています。洗面台の高さは「上端」で見ますが、蛇口・レバー・浄水器など水を供給する構造は含みません。通達が分けているのは、天板の上端が850mmを超えるかどうかの一点だけです。

ポップアップルーフのようにキャンプ時に車室を拡張する構造なら、展開した状態でこの有効高さを満たせば足ります。

クラ

じゃあ、材料を買う前に、必要な天井高が決まるんだ

シキ

決まる。天板の高さは図面上の数字だから、現物を組んでから測り直す種類の要件じゃない

寝床は、座席とは別の設備として描く

就寝設備は乗車装置の座席と兼用でないことが原則です。兼用が認められるのは、次の両方を満たす場合だけです。

  • 座席の座面・背あて部が、就寝設備になることを前提に製作されたものであること
  • 就寝設備として使用する状態にしたとき、上面全体が連続した平面を作ること

乗用車用・貨物車用に作られた標準座席は、この条件に該当しない例として明記されています。 市販車のシートを倒してフラットにしただけでは要件を満たしません。つなぎ目に穴やすき間があいているものも同じ扱いです。

キャンピング車の就寝設備に必要な寸法。大人用は長さ1.8m×幅0.5m以上、子供用は1.5m×0.4m以上

そのうえで寸法を見ます。

項目大人用子供用
長さ1.8m以上1.5m以上
幅0.5m以上0.4m以上
上方の空間0.5m以上0.4m以上
上記が緩和される範囲短辺から0.9mまで短辺から0.8mまで
緩和時の空間0.3m以上0.3m以上

上面は水平かつ平らな「連続した平面」であることが条件です。上方の空間には緩和があり、就寝部位の一方の短辺から長手方向に0.9m(子供用は0.8m)までの範囲に限り、0.3m以上あれば足ります。どちらの端にするかの指定はなく、頭側でも足元側でも構いません。

クラ

それなら足元側に寄せたいな。顔の上が詰まってると眠れない

シキ

なら頭側は0.5mのまま残る。緩和が使えるのは一方の短辺から0.9mまでで、その先は元の高さのまま

格納式・折りたたみ式・脱着式でも構いません。展開または拡張した状態で寸法を満たせばよく、畳んだ状態で測る必要はありません。

必要な寝床の数は、乗車定員から決まる

必要なのは、乗車定員の3分の1以上の大人用就寝設備です。端数は切り捨てます。

ただし乗車定員が2人以下の自動車なら、1人分あれば足りるとされています。2人乗りに改造してから申請するという組み立て方も、計算上は成立します。

大人用を1人分以上持っていれば、子供用2人分を大人用1人分として数えることもできます。

給水と排水は10リットルずつ、洗面台は正対して使える位置に

項目要件
給水タンク10リットル以上の水を貯蔵できること
排水タンク10リットル以上の排水を貯蔵できること
給水の構造タンクから洗面台等に水を供給できる構造機能を有すること
洗面台の位置車室内で容易に使用できる位置にあること

見落とされやすいのは、容量よりも洗面台の置き場所のほうです。「容易に使用できる位置」にも定義があります。洗面台等に正対して使用でき、利用者との間に他の設備等がなく、床面に著しい段差がないこと。壁ぎわに寄せて横向きに使う配置や、間に収納をはさむ配置は避けたほうが安全です。

タンクそのものは床下等に配置しても差し支えありません。付帯する配線配管も同じです。

クラ

タンクを床下に置けるなら、車内の水回りは洗面台と蛇口だけ?

シキ

そう。車室内で場所を取られるのは、洗面台と、その前に立つぶんの床のほう

炊事設備は、調理台の広さより換気とガス容器

項目要件
調理台の平面0.3m以上 × 0.2m以上
コンロコンロ等により炊事を行うことができること
耐熱・換気火気付近は十分な耐熱性・耐火性を有し、窓または換気扇等で換気できること
燃料タンクLPガス容器等の常設タンクは車室内と隔壁で仕切り、車外との通気を確保すること
燃料タンクの位置衝突等の衝撃で損傷を受けるおそれの少ない場所に取り付けること
燃料配管振動等で損傷しないよう確実に取り付け、損傷のおそれのある部分は覆いで保護すること

調理台の面積そのものは、A4の紙より少し小さい程度です。難しいのは面積より、換気とガス容器の隔壁のほうになります。

床面積0.5㎡は、設備ではなく人が立つ場所を含む

洗面台等・調理台・コンロ等を利用するための場所の床面への投影面積は、合計0.5㎡以上必要です。設備そのものの面積ではなく、それを使うために人が立つ場所を含めた投影面積です。

キャンピング車の構造要件を示した断面図。就寝設備1.8m×0.5m以上、天井高1,600mm、調理台0.3×0.2m以上、給排水タンク10L以上を図示

では、どこまでを算入してよいのでしょうか。特例が定められています。

  • 隔壁で区分された専用の場所に設けた浴室設備・トイレ設備の面積は算入できる
  • 就寝設備と座席を兼用とする場合、兼用部分の2分の1を算入できる
  • 格納式・折りたたみ式の就寝設備で、展開部分が座席と重複する場合、重複面積の2分の1を算入できる
  • 脱着式設備の専用収納場所がある場合、その面積を(格納に必要な面積を上限に)算入できる

キャンプ時に屋根部を拡張して二層構造になる車両なら、上層部分の就寝設備の面積も算入できます。この二層構造にも定義があります。

位置必要な有効高さ
上層部の最下部と、その投影面である床面との間(すべての位置)1,200mm以上
上層部の上面と屋根の内側との間(すべての位置)1,200mm以上
同上(上層部の上面が就寝設備である場合)500mm以上(短辺から0.9mまでの範囲は0.3m以上)

荷台を残したままでは申請が通らない

物品積載設備を有していないことも条件です。荷台を残したまま設備を積み込む形では、申請そのものが通りません。

設備の取り付け方にも決まりがあります。水タンクと炊事設備は、設置場所が他の部位と明確に区別できる専用の場所であれば、取り外せる構造でも構いません。脱着式の設備は、走行中の振動等で移動しないよう確実に収納または固縛できることが求められます。

電源設備は、構造要件に入っていない

AC100V電源やサブバッテリーは、構造要件に入っていません。要件を構成するのは就寝設備・水道設備・炊事設備・面積の4つで、電源についての規定はないためです。

クラ

キャンピングカーにコンセントがあるのは、決まりだからだと思ってた

シキ

区分の話と、使い勝手の話が別ということ。付けるかどうかは、車内で使う家電のワット数から決めることになる

車種ごとのAC100V電源の設定は車中泊のAC100V電源|シエンタ・セレナ・フリードで比較にまとめています。

あとから動かせないものから決める

最初に決めるのは、調理台と洗面台の天板の高さです。ここで必要な天井の有効高さが確定し、天井が確定すると、ベース車として選べる範囲も一緒に決まります。逆の順に進めると、車を買ったあとで間取りが入らないと分かる形になります。

次が乗車定員です。定員から必要な寝床の数が出て、寝床の数と寸法から、床のどこが埋まるかが決まります。定員を減らす改造は登録の内容そのものを変える話なので、内装を組み上げたあとに思いつく順番ではありません。

給排水タンクと配線配管は、そのあとでも間に合います。床下に配置できるので、間取りへの影響が小さく済むためです。

最後に測るのが、設備を使う場所の床面積です。ここは設備の配置と通路の取り方が決まらないと出せません。図面の最初ではなく、最後に残る数字だと考えておくのが安全です。

※特種用途自動車として認められるために必要な「面積の割合」そのもの(用途区分通達4-1-3③に定める合計面積との関係)は、本記事が参照した構造要件の資料の範囲外です。

本記事の数値は、国土交通省が公開している構造要件の資料(執筆時点)に基づいています。登録可否の最終的な判断は運輸支局が行いますので、実際の申請にあたっては、必ず最新の通達および運輸支局・専門業者にご確認ください。